『聖霊による生活セミナー』について(サヴィオ・マスカレナス)
サヴィオ・マスカレナス著、「カリス・インディア」誌、2016年9月号から
聖霊による生活セミナー(ライフ・イン・ザ・スピリット・セミナー、LSSと略す)は、聖霊による生活へと人びとを導くための、20世紀における重要な手段の一つとなってきました。またこれは、人びとをイエスに対する個人的な献身へともたらす、カトリック・カリスマ刷新における基本的な手立てとなってきました。
「セミナー」という語の語源は、ラテン語の seminarium に由来し、それ自体、「種子の」を意味するラテン語 seminarius に由来し、「土地を耕す」もしくは「苗床を設ける」を意味しています。それゆえLSSは、種を蒔くために相応しいときとなるべきものであり、その種子とは、新しい参加者たちのあいだに蒔かれる福音の種であり、既存のメンバーのあいだでの福音化の種であります。
このセミナーは、1971年に合衆国アン・アーバーの「神のことば契約共同体」によって開発され、世界中で広く用いられてきました。「このセミナーは、参加者たちがカリスマ的霊性の基本的な真理を十分に理解し、キリストへの意識的な献身を達成するのを助けてくれます」(カルメル修道会ドミニク・フェルナンデス神父『キリストの約束に基づいて立つ』)。ある人びとが示唆してきたように、LSSは、最初の4世紀のキリスト教の洗礼志願者養成コースや、ルネッサンス期からのロヨラの聖イグナチオの『霊操』と並んで、全教会に顕著な歴史的なインパクトを与えてきました。
聖霊生活セミナーは、教会の刷新の脈略の中で、カトリック者のグループによって一般的に用いられています。このセミナーは、人びとを聖霊の働きのより深い体験と気づきへともたらすための、有効な道具であります。このセミナーは、福音の基礎的な提示と、ご自分に身を委ねる人びとの生活の中で働く主の御業についての根本的な教えを提供します。
バート・ゲッツィ師は、『主と共に建てよ』の中で、このように述べています。「LSSは、初代キリスト教の洗礼志願者の生活に似ている。洗礼志願者の生活のように、その教育課程は聖霊における新しい生活へと人びとを導くものであり、それはさらに、キリスト教的成熟へ導くものである。両者はキリスト教入信の過程であり、それは同じような本質的要素を併せ持っている。すなわち、良きおとずれを宣べ伝えること、基礎的教え、霊における新生活をわがものとすること、およびキリスト教徒の共同体の中に組み込まれるといったことを含んでいる。」(邦訳、ヴェリタス出版社・1978年、114~115頁)
このセミナーは、参加者が、イエス・キリストがあなたとの関係を確立し、再建し、あるいは深めようとなさる諸段階を歩み進めるのを助けます。入信の秘跡の恵みを体験したカトリック信者にとっては、イエスは、ご自身との新たな、より十全なかかわりを提供してくださるのです。聖霊の賜物は、私たちの生活全般を満たし、私たちを変容させるので、その結果として、私たちは神の愛とその救いの御業を知り、かつ体験し始めます。
LSSでは、通常では1週間に1度、7週間にわたって、もしくは一定期間の週末にわたって行われる、1時間半ほどのセッションから成り立っています。
[第一講話・神の愛]
「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」(ヨハネ3・16)。この愛の現われは、私たちの救い主イエス・キリストの生涯と死と復活のうちにあります。イエスは私たちに、この愛のうちに生きることができるように聖霊を送ります。「その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる」(マタイ3・11)のです。
[第二講話・救いのみわざ]
このセミナーにおいては、参加者は、一つの国(一つの生き方、一つの社会)から他の国へと移動するように促されます。「御父は、わたしたちを闇の力から救い出して、その愛する御子の支配下に移してくださいました」(コロサイ1・13)。
[第三講話・新しい命]
神は私たちに、聖霊により、入信の秘跡を通じて、新しい命をお与えになります。これらの秘跡の力を発揮することを学ぶことは、聖霊の恵み深い賜物です。
[第四講話・神の賜物を受けるために]
主は私たちに、その聖書によって、聖霊の賜物を受けるために私たちの心を十分に開くすべを教えられました。悔い改めと信仰によって、私たちは自分たちの生活の中で聖霊の御業に応答します。
[第五講話・聖霊の満たし(聖霊による洗礼)のために祈る]
いまや参加者たちは、助けと励ましのうちに、キリストへのまことの献身を行いますが、聖霊による洗礼を求める祈りがこれに続きます。聖霊による洗礼は「人生を一変させる神の愛の体験です。聖霊によって父である神の愛が人の心に注ぎ入れられ、主であるイエス・キリストに自分のすべてを明け渡す決意を通してその愛を受ける、という体験です。」(国際カトリック・カリスマ刷新奉仕会教義委員会による『聖霊による洗礼』邦訳13頁)
[第六講話・聖霊のうちでの成長]
祈りと学習と奉仕を通じて、ひとは日々、キリスト教共同体のなかにあって聖霊の賜物をたたえます。私たちがキリスト・イエスとの個人的なかかわりを深めるにつれて、聖霊はわたしたちをキリストの体のうちに結合します。
[第七講話・キリストへの変容]
日々の生活のなかで解き放たれた霊の現存を通じて、ひとは徐々に、主との新しいかかわりによって変容されていきます。霊によって日々鼓舞され、活気づけられて、キリスト者は、現代世界のなかでキリストの体を築き上げるために聖霊の賜物を行使することによって、他者に奉仕するように自分の生活をささげます。
国際カトリック・カリスマ刷新事務局(ICCRO、現在のICCRS)は、1985年に、セミナーの第8講話として「あなたがたはわが証人となる」を追加して、LSSのリーダー用手引きを発行しましたが、この講話は、「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、わたしがあなたがたを任命したのである」(ヨハネ15・16)というイエスのことばを参加者たちに思い起こさせるものです。
LSSの目標は、参加者たちが、真実のキリスト者としての生活の基礎を築き、あるいは強化することによって、キリスト者としての新しい、より十全な生活を見出すのを助けるように設定されています。LSSの目標は、次のとおりです。
(一)参加者がキリストとの個人的な関係を確立し、再建し、あるいは深めるのを助ける。
(二)参加者たちがその生活の中で聖霊の働きに道を譲るのを助ける。
(三)参加者たちがキリスト者としての生活のなかで分かち合ったり支援を受けたりできるようなキリスト者の共同体やグループの一員となることによって、より十分にキリストに結びつけられるのを助ける。
(四)参加者たちが、キリストとのかかわりにおける成長の有効な手段を活用するのを助ける。
(五)参加者たちがキリストに従って、「人間をとる漁師」(マタイ4・19)になることによって、良きおとずれを宣べ伝えるのを助ける。
祈りのグループを築くにあたってのLSSの重要性を挙げると、
① LSSは、福音化および再福音化の道具であります。それは、信仰者たちがイエスとの個人的なかかわりを深めることができるとともに、良きおとずてを無信仰者と分かち合うすぐれた機会を提供します。
② LSSは、福音化もしくは再福音化が命と献身をもたらすので、祈りのグループが燃え続けるのを助けます。
③ LSSは、参加者たちが彼らの生活の中での聖霊の働きに道を譲ることを助け、その結果として、祈りのグループ全体が聖霊で満たされることになります。
④ 病んでいる祈りのグループにとって一番の改善法は、徹底的なダイエット(規定食)を実行することです。LSSはその答えです。
⑤ ある人が言ったように、「私たちは水族館の管理者ではなく、人間をとる漁師であるべきです」。祈りのグループのメンバーは全員、他の四・五名のひとと良き知らせを分かち合い、その人たちをLSSに招くという目標を与えることによって「漁師」とされるべきです。パンフレットや旗じるしなどを配ることにメンバーたちをかかわらせるのもよいでしょう。
⑥ LSSが計画されるときには、執り成しのグループは、祈りのグループのメンバーを執り成しや断食にかかわらせることによって、セミナーのための執り成しを直接に始めなければなりません。全員が、LSSの成功のために毎日少なくとも一連のロザリオを唱えるように求められるべきでしょう。
⑦ セミナーを行うためには、しっかりしたLSSチームを作ること。小さな祈りのグループであれば、他の祈りのグループから援助してくれる人を連れてくることもできます。
⑧ 生き生きとした賛美と礼拝のための聖歌の実践には、音楽の奉仕活動が必要とされ、また、他の人びとが挨拶のミニストリー、奉仕のミニストリー、書籍販売のミニストリーなどに携わらねばなりません。
⑨ 新しく聖霊の満たしを受けた人びとのためには、具体化されたフォローアップ企画がなければなりません。祈りや親睦を支援する手だてがなければ、ある人びとは元の生活に立ち戻ったり、他の人びとは道からそれたり、何らかのセクトなどによって打ち負かされることもあります。
⑩ LSSのあとには、霊による成長セミナー(GSS)や、霊による成熟セミナー(WSS)が行われることも可能です。それらのセミナーの各々は、順番に、先行するものの上に成り立ち、同じような形式で進められます。
すべてのものが、聖霊の力によって営まれる生活の恵みによる私たちの成長にかかわっています。
※筆者は、1977年以来インドのCCRにかかわり、ゴアの奉仕チームの議長も務めたあと、現在は全国奉仕チームの副議長として活躍。『カリスインディア』誌に「霊に満たされて築く」シリーズを、すでに16回にわたって執筆し続けています。
「生ける水」2016年秋季号No.122に掲載された記事